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研究概要

 哺乳動物の体温は外気温に関わらず一定に保たれ、血糖値は空腹・満腹に関わらず一定の範囲内に調節されています。このような外部・内部の環境変化に関わらず身体の状態を一定に保つ仕組み『恒常性』は、『健康』と密接に関わるシステムです。

 私たちは組織恒常性や免疫恒常性のメカニズムを解析することで生命の基本原理を理解するとともに、恒常性の破綻が引き起こす様々な疾患の機序解明を目指しています。

 私たちの研究ではin vivo(主にマウス)を出発点とし、生体を構成する新しい細胞種の同定や細胞機能の解明により『生命現象の基礎的理解』を目指しています。研究室では、細胞生物学・免疫学・分子生物学・生化学を用いた研究手法に加え、オミクス解析やゲノム編集技術などの先進的なアプローチを駆使し目標の達成を試みています。

 現在、研究室で進行している主なプロジェクトは次の2つになります。

1.組織マクロファージの生物学

 

 白血球の一種マクロファージは、免疫系の始動に重要な役割を担う生体防御の要です。一方、非感染時(定常状態)においてもマクロファージは全身に存在しています。これら常在性マクロファージは組織ごとに異なる多様な機能・形態を呈し、各組織の正常な働きを助けることで恒常性の維持に必須の役割を担います。

 

 近年、マクロファージの異常が様々な組織の機能障害の引き金となり、免疫不全、がん、神経疾患、生活習慣病などの様々な疾患に密接に関わることが分かってきました。

 私たちはマクロファージが組織特異性を獲得するメカニズムを解明し、恒常性におけるマクロファージの役割を明らかにすることを目指しています。

参考文献:

Okabe Y., & Medzhitov R., Cell, 2014

Okabe Y., & Medzhitov R., Nature Immunology, 2016

Okabe Y., International Immunology, 2018

2.体腔免疫系のメカニズム

 

 内臓と体壁の間の空所である体腔には多数の白血球が存在します。その細胞集団構成は他のリンパ器官でみられる白血球の構成とは大きく異なり、ユニークな免疫コンパートメントを形成します。

 体腔免疫系は血中の自然抗体の産生をはじめ全身の免疫応答に寄与しますが、そのメカニズムや生物学的重要性についてはほとんど明らかにされていません。

 本プロジェクトでは国立研究開発法人 科学技術振興機構(さきがけ)や日本学術振興会 科学研究費助成事業による支援のもとで体腔免疫系メカニズムの解明を目指し研究を行っています。

参考文献:

Yoshihara T., & Okabe Y., The Journal of Experimental Medicine, 2023

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