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研究概要

 哺乳動物の体温は外気温に関わらず一定に保たれ、血糖値は空腹・満腹に関わらず一定の範囲内に調節されています。このような外部・内部の環境変化に関わらず身体の状態を一定に保つ仕組み『恒常性』は、『健康』と密接に関わるシステムです。

 私たちは組織恒常性や免疫恒常性のメカニズムを解析することで生命の基本原理を理解するとともに、恒常性の破綻が引き起こす様々な疾患の機序解明を目指しています。

 私たちの研究ではin vivo(主にマウス)を出発点とし、生体を構成する新しい細胞種の同定や細胞機能の解明により『生命現象の基礎的理解』を目指しています。研究室では、細胞生物学・免疫学・分子生物学・生化学を用いた研究手法に加え、オミクス解析やゲノム編集技術などの先進的なアプローチを駆使し目標の達成を試みています。

 現在、研究室で進行している主なプロジェクトは次の2つになります。

1.組織マクロファージの生物学

 

 マクロファージは、免疫系の始動に重要な役割を担う生体防御の要です。一方、非感染時(定常状態)においては、マクロファージは組織ごとに異なる多様な機能・形態を呈し、各組織の正常な働きを助けることで恒常性の維持に必須の役割を担います。

 

 近年、マクロファージの異常が様々な組織の機能障害の引き金となり、免疫不全、がん、神経疾患、生活習慣病などの様々な疾患に密接に関わることが分かってきました。私たちはマクロファージが組織特異性な機能や表現型を獲得するメカニズムを解明し、恒常性におけるマクロファージの役割を明らかにすることを目指しています。

2.呼吸器の感染防御メカニズム

 

 2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界に多大な影響を与えました。COVID-19を含め、20世紀以降になって人類が経験したパンデミック(世界的大流行)は5回あり、これらは全て呼吸器感染症です。次のパンデミックも、人類がこれまでに経験していない新興の呼吸器感染症である可能性は高いと言われています。また、インフルエンザや肺炎などの呼吸器感染症は、公衆衛生上、最も対策が必要な感染症でもあります。

 私たちは、肺胞マクロファージによる捕食システムや気道の粘液繊毛クリアランスといった、呼吸器において病原体の侵入を防ぐ生体防御メカニズムに注力しています。これら呼吸器感染防御の基本的メカニズムの解明により、新興病原体を含むさまざまな呼吸器感染症に対する予防・治療法の確立が期待されます。また、呼吸器はタバコ煙、大気汚染、乾燥などの外的なストレスに直接晒されることで、その生理機能の変容を起こします。私たちは、これらストレスが呼吸器の恒常性に及ぼす影響についても研究を進めています。

呼吸器には気道の粘液繊毛クリアランスや肺胞のマクロファージによる捕食システムなどのユニークな感染防御メカニズムが備わる。

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